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広島高等裁判所 昭和31年(ツ)20号 判決 1957年2月04日

上告人 寺西勝一

被上告人 岸本亀治

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は別紙記載の通りであり、これに対する当裁判所の判断は次の如くである。

原審の適法に確定した事実によれば、昭和三十年七月中被上告人はその妻よしこを代理人として、たまたま上告人の不在中留守居をしていた上告人の妻に対して本件飲食代金の支払を催告したというのである。およそ、催告は一種の意思通知であつて意思表示に関する規定がこれに準用せらるべきものであるから、催告は相手方に到達した時にその効力を生ずるものと解すべきものである。その理は、催告が郵便その他の書面によつてなされた場合と口頭で以てなされた場合とで異なるべきではない。本件の場合の如く、上告人の不在中その住居において留守居中の上告人の妻に対し催告がなされた時には、その催告は上告人の勢力範囲内に入り上告人において了知可能の状態を生じたと認め得るから、現実に上告人がこれを了知したと否とを問わず、且つその了知の時を待たず直ちにその効力を生ずるものといわねばならぬ。右の場合、夫たる上告人と共同生活を営む上告人の妻は当然上告人のために上告人に対する催告或は意思表示の受領機関となるものと解すべきである。原審が右の場合上告人の妻は夫たる上告人に対する催告を受領する程度の代理権限を授与されているものとみるべきであると認定したのは、前示の通り上告人の妻に対する本件催告が当然直ちに上告人に対しその効力を生じた所以を説明せんとしたものであつて、その結論において結局正当に帰するから、本件論旨は理由がない。

よつて、民事訴訟法第四百一条、第九十五条、第八十九条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 植山日二 裁判官 佐伯欽治 松本冬樹)

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